ちょっとリアル

技能グランプリに出た奴に僕の組みノミを貸していたんだけど、その後の対応はどおするのか楽しみで放っておいた。

全てのノミの刃をキチッと研いで返すのか、はたまた「このまま貸して下さい」と頼むのか。

結果は後者でした。

僕の元にお手紙が届いてそう書いてありました。

人にお願いするのにメールやLINEじゃ味気ないですよね。

僕がそういう考えの人間だと解っているから、奴はお手紙を書いたわけです。

まぁ「良くできました。花丸をあげましょう」てなとこです。




そいつに貸した組みノミは僕が家具職人になってからの20年記念として、月島の鍛冶屋に頼んで打ってもらったノミです。

ですから自分で使った事はありません。

仕込みだけです。

ノミの柄を生漆で何回も拭き漆して、冠(かつら)を下げて裏押しをしました。

職人じゃない方がこの部分を読んでもさっぱりですよね。

とにかく使えるまでに1ヶ月以上かけています。

使ってないけどメモリアルだし手間は掛けたんで、ちょこっとは愛着あるんですけどねぇ~。

でも道具は使ってなんぼですし、僕は僕で自分がグランプリに出る時に打ってもらった組みノミがあるんで。

その組みノミ引っ提げて優勝して日本一になったから、やっぱそっちの方が愛着は遥か上です。

だからという訳でもないんだけど、奴に貸していた組みノミは貸し続ける事にしました。

その旨伝えて、なおかつ「もし僕が死んだら組みノミは差し上げます」とも伝えておきました。

メールでね。

ははっ。


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